生物図鑑
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現在掲載の分類群
生物と非生物
生物の体は糖質、脂肪酸、核酸、アミノ酸などの共通の化学物質から組成され、その基本単位としての細胞は外部環境からエネルギーを得て代謝、修復、維持、増殖を行う。
細胞内の核酸はその分子の配列による自己を複製するための遺伝情報を持ち、それは細胞生成の過程で新たな細胞へ引き継がれる。生体を構成する主要な成分である蛋白質を合成するための情報は普遍的な暗号として全ての生物に基本的に共通しているため、地球上の生物はひとつの共通祖先から進化したと仮定されている。生物の遺伝情報にはこうした共通要素がありながら配列が変異する部位があり、約40億年という期間の膨大な累積が現在のような多様な体系を生み出したと考えられている。
このような遺伝の仕組み、細胞の構造と自律する機能は非生物と区別されるものである。
ウイルスには宿主となる細胞が必要で、それ自体の生理機能を持たない構造体のため必ずしも生物とは呼べないが、独自の遺伝情報を持ち、それが時間と共に変異する点は生物と共通している。
種の概念
生物の種数は現在209万種以上が記載(オンラインデータベース Catalogue of lifeによる)されており、体長0.1mm程度の微小なものまでを含めると推定は数千万種に及ぶこともある。
種は生物分類における基本単位であり、ある生物がどの「種」に属するかの定義は時代の変遷と共に移り変わり、現代もその途上にある。
古くはアリストテレス Aristotelēs(BC.384〜BC.322)の時代から生物の命名と体系化は行われていたが、現在広く定着している命名規則と階層式分類体系は分類学の父と呼ばれるスウェーデンのカール・フォン・リンネ Carl von Linneus(1707-1778)の著した『自然の体系 』に拠り、生物の持つ形態の差異を分類の根拠とするもので、この時代には生物の持つ形態は不変であると考えられていた。
やがて時代が下るとダーウィン Charles Darwin(1809-1882)が『種の起源』を著し、形態の類似性は進化上の共通祖先に由来し、その系統によってまとめられ、またそこから分化していることを示し、分類体系と進化系統を結びつけた。
ところがそれらの形態を視座とする場合、同種内で明らかに形質の異なる「多型」や雌雄、幼体と成体の差異を上手く説明することができない。このことを踏まえ、マイヤー E.Mayrは1942年に種を「相互に交配可能で生殖的に隔離された自然集団の集合」と定義する生物学的種概念を提唱した。この意味するところは、同所的に存在する集団が自然条件下で交配し子孫を残すなら同種と見做し、そうでない場合隔離されており別種と見做すというものである。この概念は現在でも広く支持されている。
ただし全ての種で隔離の状況を確認することができないため、様々な間接的証拠に基づく推測を論拠とする。また、無性生殖を行う生物にはこれを適用することができない点や進化の時間軸の中にいる種をどの時点で分離するかという問題を孕む。
シンプソン G.G Simpsonが提唱した進化学的種概念は「他の系統から分離しており、独自の進化的役割や傾向、歴史を持つ単一の系統」と種を定義する。これは生物学的種概念を引き継ぎ、時間の変化を導入したため無性生殖や化石種にも適用しやすい。しかし「役割や傾向」という基準については恣意的で曖昧さが窺える。
自然分類と人為分類
こうした諸々の種概念はメイデン R.L Maydenの1997年の調べによると少なくとも24種類が確認されており、近年も増加の傾向を持つ。
種概念を便宜的に大別すると、繁殖システム・遺伝子の共有・生態的地位を論拠とする機構論的種概念と、形質の違いを論拠とする識別論的種概念に分類され、前者は生物学的な実体として種を規定し、後者は種がどのグループに属するかという人為的分類のための方法論を提示するものである。
歴史上で長く為されてきた生物分類は形態・類型に基づく人為的区分であり、種以外の高次な分類階級は生物学的な実体ー機構を反映したものではない。化石種も同様である。こうした方法は生物の集団を経験的に捉え命名し、人間が認知しやすい分類体系を形作るには実用的だった。ところが技術革新によって新しい視点が現れると旧来の体系にほころびが生じるのである。
現在では進化生物学の発展にともない、複数の形質、遺伝子情報、生態情報を加味した生物学的実体として種を記載する例も増えている。
分類階級
現在広く普及している動物の分類体系の枠組みは、上位のグループが下位のグループを包括する形で階層を形成するリンネ式階層分類と呼ばれるもので構成され、リンネの『自然の体系, 第10版』(1758年)の時点では綱、目、科、属、種、変種の6つが提案され、4236種を記載した。後年研究が進むことで修正が重ねられ、下表のような形となっている。
より上位の階級 | 階級と国際表記 | ヒトの各階級での位置付けと名称 |
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界 Kingdom | 動物界 Animalia | |
亜界 Subkingdom | ||
門 Phylum | 脊索動物門 Chordata | |
亜門 Subphylum | 脊椎動物亜門 Vertebrata | |
上綱 Superclass | Gnathostomata | |
綱 Class | 哺乳綱 Mammalia | |
亜綱 Subclass | 真獣亜綱 Theriiformes | |
下綱 Infraclass | 正獣下綱 Holotheria | |
上団 Superlegion | Trechnotheria | |
団 Legion | Cladotheria | |
亜団 Sublegion | Zatheria | |
下団 Infralegion | Tribosphenida | |
上区 Supercohort | Theria | |
コホート(区)Cohort | Placentalia | |
亜区 Subcohort | ||
巨目 Magnorder | Epitheria | |
上目 Superorder | Preptotheria | |
大目 Grandnorder | Archonta | |
中目 Mirorder | ||
目 Order | 霊長目 Primates | |
亜目 Suborder | Haplorrhini | |
下目 Infraorder | 狭鼻下目 Simiiformes | |
小目 Parvorder | Catarrhini | |
科階級群 | 上科 Superfamily | ヒト上科 Hominoidea |
科 Family | ヒト科 Hominidae | |
亜科 Subfamily | Homininae | |
上族 Supertribe | ||
族 Tribe | Hominini | |
亜族 Subtribe | Hominina | |
属階級群 | 属 Genus | ヒト属 Homo |
亜属 Subgenus | ||
種階級群 | 種 Species | ヒト Homo sapiens |
亜種 Subspecies |
これらの中で標準的に使用されるのが界、門、綱、目、科、属、種の7つの基本階級と呼ばれるグループである。
本サイトの動物の分類階級の表示
界Kingdom | 動物界 | |
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門Phylum | 節足動物門 | 脊索動物門 |
綱Class | 昆虫綱 | 鳥綱 |
目Order | 甲虫目 | スズメ目 |
科Family | コガネムシ科 | スズメ科 |
属Genus | カブトムシ属 | スズメ属 |
種Species | カブトムシ | スズメ |
本サイトでは編集上の理由と情報の過剰さを避ける目的で、現状基本階級にとどめてカテゴリと内部リンクを作成し、必要に応じて各項目の中で詳細な記述を行う。
動物の学名と表記
学名は学術的な場で使用される種の表記で、通常属名と種小名の2語で表す二名式命名法(二名法)を用い、種の名称の言語間や地域による差異から生じる混乱を解消するものである。この記法は『自然の体系, 第10版』で統一されたが、以降記録される種数の増加に応じて動物命名法国際審議会は1961年に『国際動物命名規約』を定め、より厳密で詳細なルールが設けられた。
命名には全てラテン語を用い、属階級以下のグループは斜体で、種階級以下は全て小文字で記載する。亜種小名を記載する場合は三名式命名法(三名法)と呼ばれるが、属が複数の亜属に分かれることを表す時は括弧付きで亜属名を挿入する。この場合亜属名は「挿入」という形で、単語の数が増えても命名法の扱いは二名法または三名法となる。
分類学の論文等で命名者、命名年を併記するそれぞれの場合のルールは以下の形である。
二名法 | Chironomus plumosus[オオユスリカ] |
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属名 / 種小名 | |
二名法 命名者記載 | Chironomus plumosusLinnaeus[オオユスリカ] |
属名 / 種小名 / 命名者 | |
二名法 命名者/命名年記載 | Chironomus plumosusLinnaeus, 1758[オオユスリカ] |
属名 / 種小名 / 命名者 / 命名年 | |
二名法 亜属名/命名者/命名年記載 | Chironomus (Chironomus) plumosusLinnaeus, 1758[オオユスリカ] |
属名 / 亜属名 / 種小名 / 命名者 / 命名年 | |
三名法 命名者/命名年記載 | Locusta migratoria cinerascensFabricius, 1781[トノサマバッタ] |
属名 / 種小名 / 亜種小名 / 命名者 / 命名年 |
亜種とさらに下位の型の名称
亜種はリンネ式階層分類体型において種の直下に置かれる階級。固有の特徴を共有し、同種内の異なる亜種は互いに重なり合わない分布域を占め、潜在的に交配可能なものと定義される。
亜種よりも下位の「型」として変種(varaety)、型(form)、遺伝的多型(morph)、品種(race)、突然変異型(mutant)、季節型(seasonal form)などが区別され命名されることがあるが、動物分類においてこれらは国際動物命名規約の適用を受けず、学名になはらない。しかし国際藻類・菌類・植物命名規約では変種や品種などが階級として認められている。
分類体系の変遷
三界説 ヘッケル 1866年 | 四界説 コープランド 1956年 | 五界説 ホイタッカー 1969年 | 六界説 ウーズ / フォックス 1977年 | 三ドメイン説 ウーズら 1990年 | 構成する生物群 |
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原生生物界 | モネラ界 | モネラ界 | 真正細菌界 | 細菌ドメイン | 細菌 |
古細菌界 | 古細菌ドメイン | メタン生成細菌、好熱好酸菌 | |||
原生生物界 | 原生生物界 | 原生生物界 | 真核生物ドメイン | 藻類、原生植物、変形細菌 | |
植物界 | 菌界 | 菌界 | きのこ、かび、地衣植物 | ||
植物界 | 植物界 | 植物界 | コケ類、試打類、種子植物 | ||
動物界 | 動物界 | 動物界 | 動物界 | 無脊椎動物、脊椎動物 |
アリストテレスの時代から18世紀まで生物は動物と植物に二分されていたが、顕微鏡の、特に19世紀以降の発達による微細な細胞内構造の発見、20世紀以降の電子顕微鏡と分子系統解析による遺伝子情報の知見に伴い分類体系は大きく更新されて行く。
ドイツのヘッケル E.H.Heackel(1834-1919)は1866年三界説を提唱し、動物界にも植物界にも分類できない生物群を原生生物界とした。この時点の原生生物は多様な単細胞生物、菌類、単細胞の藻類や海綿を含んでいた。
20世紀には電子顕微鏡の開発により細胞の構造に核膜や複数の小器官の有無が確認され、それらを持たない細菌・藍藻類のグループをモネラ界とし、植物や動物の特徴を持たない生物(摂食、移動を行う単細胞生物、細胞群体、紅藻、褐藻など)を原生生物界とするコープランド H.E.Copeland(1902-1968)の四界説が現れる。
その後のホイタッカー R.H.Whittaker(1920-1980)の五界説では核膜、細胞小器官を持たない細菌等の原核細胞から成る生物をモネラ界、それらを持つ真核細胞の単細胞生物を原生生物界とし、また生産、消費、分解という生物の持つ三つの栄養摂取様式に注目し、生産者の植物、消費者の動物に対して分解者としての菌類を認めた。モネラ界以外の四界は全て真核細胞で構成されるグループとなる。
さらに20世紀後半になると、細胞内の蛋白質生合成の場となる構造であるリボソームを構成する核酸(リボソームRNA、rRNA)の内部構造の差異による系統解析が可能になり、ウーズ C.R.Woese(1928-2012)らは生物界を細菌 Bacteria、古細菌 Archaea、真核生物 Eucaryaの三つのグループに分け、それぞれの生物群の差異から、分類階級の頂点であった界 Kingdomの上に置くドメイン(超界)Domainを設定する三ドメイン説を提唱した。
古細菌は好熱、好酸、好塩、メタン生成、硫黄依存など様々な性質の極限環境に生息する細菌である。ウーズの推論ではこれら三ドメインの生物は30〜40億年前には存在しており、古細菌の内メタン生成菌が原始地球の大気の組成に近い環境を好むことからこの名が与えられたが、古細菌は細菌よりも真核生物と近い関係が指摘されている。
以後この他にもこれらを修正した体系や、界を細分化したものが提案されるなど、議論は続けられている。
地質時代と生物の変遷
累代 | 代 | 紀 | 世 | 年代 | 生物の変遷 | 地球環境の変動 | ||||||||||||||||||
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顕生代 | 新生代 | 第四紀 | 完新世 | 1万1700万年前〜 | 約1万年前に人類が農耕を開始する | 海水準上昇 間氷期の始まり、気候が徐々に温暖になる | ||||||||||||||||||
更新世 | 258万年前〜 | 約20万年前、現生人類ホモ・サピエンスの出現 約200万年前頃からホモ・ハビリス、ホモ・エレクトゥスなど道具や火を使用する原人の出現 | 1万8000年前に最終氷期の終了 北半球に氷床が形成 | |||||||||||||||||||||
新第三紀 | 鮮新世 | 533万3千年前〜 | 原始的な石器を使用する猿人アウストラロピテクス属の出現 | 約400万年前にはヒマラヤ山脈とチベット高原が形成 | ||||||||||||||||||||
中新世 | 2303万年前〜 | 約700万年前の中央アフリカに直立二足歩行を行う猿人サヘラントロプスが出現 | 約800万年前に東アフリカで乾燥化が進み、森林が減退 1000万年前にはインド亜大陸とユーラシア大陸の衝突でヒマラヤ山脈が上昇 | |||||||||||||||||||||
古第三紀 | 漸新世 | 3390万年前〜 | 現生のサイに近縁で全長7.5m程の史上最大の陸棲哺乳類、インドリコテリウムの出現 | 寒冷化が進み南極に氷床が現れる | ||||||||||||||||||||
始新世 | 5600万年前〜 | 最古のクジラの出現 霊長類の出現 哺乳類の多様化 | インド亜大陸が赤道を超えてユーラシア大陸に接近する マグマの活動による海底のメタンハイドレード融解、急速な温暖化を経て寒冷化・乾燥化に向かう | |||||||||||||||||||||
暁新世 | 6600万年前〜 | 体長2m程度の大型鳥類ガストルニスの繁栄 被子植物の繁栄 | ヨーロッパのアルプス造山運動、ロッキー山脈、アンデス山脈など「世界の尾根」の形成が始まる | |||||||||||||||||||||
中世代 | 白亜紀 | 1億4500万年前〜 |
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ジュラ紀 | 2億14万年前〜 | 被子植物の出現 鳥類の出現 恐竜の繁栄ー大型化 裸子植物の繁栄 | ジュラ紀中盤以降まで低酸素濃度の時期が続く | |||||||||||||||||||||
三畳紀 | 2億5190万 2000年前〜 |
| 二酸化炭素・メタンの増加、寒冷化、火山活動の活発化、酸素濃度の低下など生物を脅かす環境変動が続く 超大陸パンゲアの形成 | |||||||||||||||||||||
古生代 | ペルム紀 | 2億9890万年前〜 | ||||||||||||||||||||||
石炭紀 | 3億5890万年前〜 | 草食四肢動物の出現 爬虫類の出現 シダ植物の森林が出現 | 後期には酸素濃度が現在の1.5倍に 二酸化炭素濃度の急激な減少 地表が分解された生物からなる土壌に覆われる | |||||||||||||||||||||
デボン紀 | 4億1920万年前〜 |
| 中期に酸素濃度の低下 | |||||||||||||||||||||
シルル紀 | 4億4380万年前〜 | 既知の最古の植物化石クックソニアの発生 珊瑚礁の著しい発達 | 酸素濃度の増加 | |||||||||||||||||||||
オルドビス紀 | 4億8540万年前〜 |
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カンブリア紀 | 5億3880万年前〜 |
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原生代 | 先カンブリア時代 | 25億年前〜 |
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太古代 | 40億年前〜 |
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冥王代 | 45億6700万年前〜 |
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日本の野生生物
多様な動物を育む環境
日本列島は南北3000kmに及ぶ弧状列島であり、亜寒帯から亜熱帯までの広い気候帯を含んでいる。北緯45度から20度までの比較的高緯度に位置しながらも、世界の同緯度帯に比べて温暖で多雨なのは赤道付近からの暖流、黒潮の影響があり、夏の季節風は太平洋から暖かく湿った空気を運んで太平洋側に雨を降らせ、冬は大陸からの季節風が日本海側に降雪をもたらすためである。
一般的に高温多湿な地域ほど生物の種数が増える傾向にあるが、前述の通り幅広い気候帯を含む上、本州には3000m級の山岳が連なり、低地から高山までそれぞれの環境に適応した生物に生息地を提供しており、複数の点で日本の生物相を多様にしている。加えて国土の60%以上が森林で覆われ、植生も多様であるため、こうした環境は多様な動物の棲み家としても当然好適である。実際に哺乳類では狭い日本列島でも110種が分布しており、中国の414種と比べると4分の1程度であるが、中国の面積が日本の25倍もあること考慮すると、日本列島の環境の多様さを示しているといえる。
種数の増加と種固有化の条件
新生代第四紀以降の氷期で日本列島の海岸線は上昇と後退を繰り返し、大陸と陸続きになることが何度もあった。気温の低下により海水が氷河となって高地に留まり、海底が露出し、海峡が陸橋となるのである。この時期に大陸から渡来する種が日本に定着するわけであるが、種の供給源は地域により違いがある。
日本列島は生物地理学的には二つの地域に跨がっており、北海道から吐噶喇列島にある悪石島と小宝島の境界までは旧北区と呼ばれる範囲であり、この地域にはアジア北東部に由来する種が分布し、それ以南は東洋区と呼ばれる範囲内で、中国南東部から台湾、東南アジアと共通する種が見られ、それぞれ起源の異なる動物相を形成する。
二つの生物地理区を含むことと、大陸との関わりは日本列島の生物の種数を増やす一因であるが、大陸と地続きになった歴史を持つ地域は固有種の割合が少ない傾向にあり、大陸棚上に位置する北海道から南西諸島までの島々は地理的には大陸島と呼ばれる。一方小笠原諸島のように火山活動によって生成し、大陸からの距離が遠く、一度も地続きになることのなかった島は海洋島と呼ばれる。海洋島の生物相は漂着や飛来などの手段によって定着できたもののみによって構成されるため、種数が少なく、量的質的な原因から捕食性動物を欠く点が挙げられるが、結果的に厳しい競争に晒されることなく、長期に渡って外部の環境と隔離されるため、固有化された種が多いという特徴を持つ。
しかしながら、大陸島に属する島でも成立の歴史が古い場合は海洋島的な性質を持つことがある。奄美大島と徳之島にのみ分布するウサギ亜科のアマミノクロウサギなどは、その形態に中生代に栄えた種に繋がる原始性を示しており、より進化した種との競争を免れて生き残った残存種の一例といえる。
こうした隔離による固有化の例は離島に限らず、本州においても少なくない。国土の70%以上が平地よりも高い丘陵や山地で占められ、陸地は起伏に富んでいる。加えて日本は多雨地域であり、東西に狭い地形は海までの流程の短い急流河川を多く形成し、生息地を分断するため、魚類、両生類、昆虫などの小型の水生生物では地域的な固有種が多い。
概観すると日本列島の動物相の多様さは、大陸との歴史的な関わりと、地理的な隔離による固有化によって種数が多いことと、それらを支える幅広い気候条件によるものであることがわかる。
掲載中の種 現在52種
参考文献
- H. F. Copeland (1956) "The Classification of Lower Organisms", BHL
- R. H. Whittaker (1969) "New Concepts of Kingdoms of Organisms", Sience
- R. C. Woose, O. Kandler & M. L. Wheelis (1990) "Towards a natural system of organisms : Proposal for the domains Archaea, Bacteria, and Eucarya", PNAS
- 大森晶衛、柴崎達雄、小森長生 編 『グラフィックス・日本の自然』平凡社 1988年
- 佐藤正孝 編 『新版 種の生物学』平凡社 2003年4月25日 第5刷
- 佐々治寛之 著 『動物分類学入門』 東京大学出版会 2005年4月8日 第6刷
- 藤田敏彦 著 『新・生命科学シリーズ 動物の系統分類と進化』 裳華房 2010年4月25日
- 巌佐庸、倉谷滋、斎藤成也、塚谷雄一 編 『岩波生物学辞典 第5班』 岩波書店 2013年
- 川上紳一、東條文治 著 『図解入門 最新地球史がよくわかる本 [第2版]』 秀和システム 2013年6月1日 第1版第2刷
- 田近英一 監修 『【大人のための図鑑】地球・生命の大進化』 新星社出版 2017年4月15日
- 鎌田浩毅 著 『地球の歴史(上)ー水惑星の誕生』 中央公論社 2017年6月30日 4版
- 鎌田浩毅 著 『地球の歴史(中)ー生命の登場』 中央公論社 2017年6月30日 3版
- 鎌田浩毅 著 『地球の歴史(下)ー人類の台頭』 中央公論社 2017年6月30日 3版
- 公益社団法人日本動物学会 編 『動物学の百科事典』丸善出版 2018年9月28日
- 日本地球惑星科学連合 編 『地球・惑星・生命』 東京大学出版会 2020年5月22日 初版
- D・サダヴァ 他 『アメリカ版 新・大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学』 講談社 2021年3月1日
- 木村直之 編 『Newton 大図鑑シリーズ 古生物大図鑑』 ニュートンプレス 2021年9月15日
- Catalogue of Life
- International Commission on Stratigraphy