生物図鑑

ウシガエル

  • ウシガエル
    撮影:兵庫県神戸市 2013年8月24日
  • ウシガエル
    撮影:兵庫県神戸市 2013年8月23日
  • ウシガエル
    撮影:兵庫県西宮市 2014年9月2日
  • ウシガエル
    撮影:兵庫県神戸市 2013年8月24日
  • ウシガエル
    撮影:兵庫県西宮市 2014年9月2日
    ウシガエルのオタマジャクシ
  • ウシガエル1
    兵庫県神戸市 2013年8月24日
  • ウシガエル2
    兵庫県神戸市 2013年8月23日
  • ウシガエル3
    兵庫県西宮市 2014年9月2日
  • ウシガエル4
    兵庫県神戸市 2013年8月24日
  • ウシガエル5
    兵庫県西宮市 2014年9月2日
    ウシガエルのオタマジャクシ
基礎情報
学名Lithobates catesbeianus
英名 / 漢字Bullfrog / 牛蛙
大きさ頭胴長:雄111〜178mm、雌120〜180mm(最大200mm)
分布・時期北米東部原産。北海道南部、本州、四国、九州、南西諸島など国内のほとんどの地域に移入
生息環境平地から低山の河川や湖沼、ため池、水田、湿地など止水性で潜水が可能な深さの水草が多い場所
食物他のカエル類やザリガニ、昆虫、小型の鳥類・哺乳類まで捕食する
別名 / 地方名食用ガエル

特徴・形態

頭胴長:雄111〜178mm、雌120〜180mm(最大200mm)で国内最大のカエル。北米東部原産でアメリカでも最大。体色は緑色〜褐色で、全体に不規則で不明瞭な暗褐色の斑紋が広がり、背面はトラフ模様で四肢は波状。上顎から側頭部は斑紋がなく明るい緑色。体色には雌雄差があり、雄の体色は暗く斑紋が不明瞭、雌は斑紋が明瞭で緑色が薄い傾向にある。
体格は幅広く四肢が長大で、前肢は伸ばすと頭胴長の半分に達し、後肢の水かきはよく発達している。背面は背側線隆起がなく、表皮は比較的滑らかだが、小さな突起が散在する。鼓膜は巨大で眼の1.7倍に及び、雄の方がより大きくなる。雄は喉に一対の鳴嚢を持つ。

分布・観察時期・生息環境

北米東部原産で、1918年以来日本に移入。繁殖力・適応力が強いため、現在は北海道、本州、四国、九州、南泉諸島など全国に分布が拡大している。
平地から低山の河川や湖沼、ため池、水田、湿地など止水性で潜水が可能な深さの水草が多い場所を好む。

生態

四肢が良く発達しており潜水が巧みで、跳躍力も3mに及ぶ。強い捕食性を持ち、他のカエル類や昆虫、小型の鳥類・哺乳類を食べる上、動くもので口に入る大きさであれば何にでも食い付く習性があり、時折釣竿にかかることもある。
繁殖は5〜9月の間で、雌を巡って雄同士の激しい闘争を行う。雌は生息地の水量の多い場所で直径1.2〜1.5mmの卵を6000〜4万個程産卵し、卵塊は50cm程の大きなシート状になる。孵化後オタマジャクシは1〜2年かけて120〜150mmまで成長するが、時に170mm及ぶこともある。秋までに変態しなかったものは冬眠に入り翌年変態する。

ウシガエルの名前は牛に似た低く大きな声で鳴くことに由来するが、人が近づくなどして驚くと高い声で鳴いて水中に飛び込む。

人との関わり

食用蛙として

ウシガエルは食用になり、調理では主に後脚の大腿を使用する。1918年にアメリカのニューオーリンズから雄12匹、雌5匹のつがいが東京に輸入されたが、当時の農商務省は農家の副業に有利と考え、この養殖を国策として奨励し、1930年には年間600t、その3年後にはハワイとアメリカ本土に毎月1,000tを出荷するほどの全国的な産業となった。その後第2次大戦を経て1970年代には廃れ、現在では一部地域を除いて需要は少ないが、実験動物として利用されることもある。

ウシガエルの塩焼き
和歌山県の白浜、長久酒場提供:鶏肉のような味と食感のウシガエルの塩焼き

特定外来種として

前述の食用蛙としての価値を失ったウシガエルは、全国の養殖場から逃げ出したり遺棄されたりしたものが定着し、強い繁殖力で日本のほぼ全ての地域で生息量と分布が拡大した。本種は環境省の指定する特定外来種であり、採取はできても移動や放棄は外来生物法で禁じられている。また、国連自然保護連合(IUCN)及び日本生態学会がそれぞれ定める侵略的外来種ワースト100にも記されており、在来の昆虫、甲殻類、魚類などに対して強い圧力を持ち、絶滅危惧種の存続をも脅かしている。沖縄諸島では他のカエルが見られなくなった地域もあり、秋田県の池でもモリアオガエルが見られなくなった地域もある。

駆除の成功例

これに対して小笠原諸島の弟島では2004年から2009年にかけてカゴ罠を用いた駆除で成功しており、環境省は根絶を宣言している。この後、弟島のウシガエルの主な捕食者であった同じく外来種であるノブタの駆除にも成功している。この例は食物連鎖の種間関係を考慮できる好例で、先にノブタを駆除してしまうと被捕食者であるウシガエルの駆除は進まないことがわかる。これは合理的な外来種駆除のケーススタディとして認識されている。カゴ罠については他の地域でも利用されるようになった。

参考文献

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