生物図鑑

アユ

  • アユ
    撮影:三重県熊野市 2013年8月3日
  • アユ
    撮影:三重県熊野市 2013年8月3日
  • アユ
    撮影:三重県熊野市 2013年8月3日
  • アユ
    撮影:三重県熊野市 2013年8月3日
  • アユ
    撮影:三重県熊野市 2013年8月3日
  • アユ
    撮影:三重県熊野市 2013年8月3日
  • アユ1
    三重県熊野市 2013年8月3日
  • アユ2
    三重県熊野市 2013年8月3日
  • アユ3
    三重県熊野市 2013年8月3日
  • アユ4
    三重県熊野市 2013年8月3日
  • アユ5
    三重県熊野市 2013年8月3日
  • アユ6
    三重県熊野市 2013年8月3日
基礎情報
学名Plecoglossus altivelis
大きさ全長10〜25cm
分布・時期北海道西部から屋久島以北で仔魚は11月中旬から海に下り、成体は7〜11月中旬
生息環境河川の中〜上流の清流、渓流、ダム湖など
食物幼体は動物プランクトンや水生昆虫の幼虫等、成体では付着藻類
別名 / 地方名コアユ(琵琶湖)、アイ、アイノイオ、シロイオ

特徴・形態

全長10〜25cm程度。岩に付着した藻類を剥ぎ取るのに適した、くし状構造の櫛状歯(しつじょうし)と呼ばれる歯を持ち、その外側の唇の形状が目立つ。側面から見ると胸びれの後方に黄色い楕円斑があり、背びれが大きい。
成熟するとサビアユと呼ばれ雌雄ともに全身が黒くなり、この時オスは色味が強く背びれがより大きくなる。
琵琶湖産の個体群は小型で、15cm程度で成熟しコアユと呼ばれる。

目・科等の分類群の名称である「キュウリウオ」は近縁種の種名でもあるが、これは収穫したばかりの魚がキュウリのようなにおいを発することに因み、アユもその特徴を持つ。このにおいは人で言うところの加齢臭に相当し、特有の化学物質に由来するため食性に基づくものではない。

分布

国内で北海道西部から屋久島以北まで。亜種リュウキュウアユ P.a.ryukyuensis は沖縄島で絶滅し奄美大島に分布。現在の沖縄島のものは奄美より移植。
国外は朝鮮半島南岸、中国南東部沿岸、台湾(絶滅後琵琶湖産のものを再導入)、ベトナム北部まで分布。

生息環境と生活史

河川の下流域で秋に孵化した仔魚は海に下り、翌春生まれた川に遡上し、8月頃までに中〜上流域の渓流〜清流で成熟する。アユの寿命は約1年で、この期間に川〜海を往復する両側回遊と呼ばれる生活史を送る。

シラスアユ

10月下旬〜11月中旬、流れの緩やかな下流で直径1mmの卵が砂礫に産み付けられる。10〜14日で孵化後、卵黄を吸収した仔魚は10〜12月に海に入り、全長2.5〜6cm程度までシラスアユと呼ばれ沿岸域で動物プランクトンを食べて過ごす。
3〜5月に全長5〜6cm程になった稚魚は群れで川を遡上し、水生昆虫などを食べる。
体長約4cm前後には円錐状の歯からくし状の櫛状歯に生え替わり始め、動物食性から川底の石に付着した藍藻、珪藻などの藻類を中心とする植物食性に変化し、全長6〜7cmで成魚の形になる。

すみつきアユ

6月頃中流域に上り、7〜8月に全長20〜25cm程度まで大きく成長しなわばりを持つようになる。この頃はすみつきアユと呼ばれる。

落ちアユ

9月中旬以降〜10月にかけて中〜下流域に下り、“落ちアユと呼ばれるようになる。

サビアユ(錆鮎)・フルセ(古背)

10月下旬〜11月中旬に成熟したアユは雌雄共に婚姻色が現れ、全身が黒くなり、流れの緩やかな下流域の砂礫底に産卵する。

とまりアユ(止鮎)

通常1年の寿命で産卵後に一生を終えることから「年魚」とも呼ばれるが、稀に越年したものは「とまりアユ(止鮎)」と呼ばれる。

人との関わり

食用で釣りや漁業の対象として重要視され、養殖されることもある。釣法としてはなわばりを持つ習性を利用した世界でも類例のない「友釣り」が知られる他、毛鉤釣り、掛け釣りなどがある。
また、岐阜県の長良川では鳥類のウミウを用いた漁法として「鵜飼」が行われており、7世紀中国の『隋書』「東夷伝倭国条」や8世紀日本の『古事記』や『日本書紀』で鵜飼に関する記述が見られることから1300年以上の歴史を持つとされ、国の重要無形民族文化財に指定されている。

調理法として塩焼き、寿司、甘露煮、唐揚げ、ムニエルなどがあるが、塩焼きに蓼酢をつけた食べ方は特に人気。また腸の塩辛「うるか」、卵巣の塩辛「子うるか」も珍味として好まれる。

参考文献

  • 藤原昌高 「からだにおいしい魚の便利帳」 高橋書店 2010年
  • 豊田直之他 「新版 写真でわかる釣り魚カラー図鑑」 西東社 2016年
  • 斉藤憲治 内山りゅう 「くらべてわかる淡水魚」 山と渓谷社 2017年
  • 細谷和海 「増強改訂 日本の淡水魚」 山と渓谷社 2019年
  • 中坊徹次 小学館の図鑑Z 日本魚類館 小学館 2022年 第6刷
  • 岐阜市鵜飼観覧船事務所 ぎふ長良川の鵜飼

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