クサガメ
基礎情報 | |
---|---|
学名 | Mauremys reevesii |
英名 / 漢字 | Reeves's turtle / 臭亀 |
大きさ | 甲長:雄18cm、雌25cm |
分布・時期 | 本州、四国、九州、周辺島嶼で4〜10月の間活動 |
生息環境 | 河川、湖沼、水田や農業用水路など |
食物 | 雑食性で藻類、水草の茎、イネ目の植物から水生昆虫、ザリガニのような甲殻類、魚類まで幅広い |
特徴・形態
甲長:雄15〜20cm、雌18〜25cmで稀に30cmに及ぶ。背甲は茶褐色〜黒褐色で形状は比較的扁平、背甲中央と左右のそれぞれ中央に頭部から尾部にかけて3本隆起する部分(キール)がある。側頭部から頸部、咽頭部にかけては黒く縁取られた黄色い不規則な線状の模様、もしくは斑点が断続的に連なる。若い個体は背甲の甲板の境界線が黄色く縁取られることがあるが、雄は甲長10cm以上で性成熟すると体表にメラニンが沈着し、眼も含む全身が黒化して模様が消失する。
分布・観察時期・生息環境
本州、四国、九州、周辺島嶼、中国東部、朝鮮半島、台湾などに分布。近年は北海道と奄美大島にも侵入している。
泳ぎは巧みではなく、生息環境は河川の中〜下流域、池や沼、水田、農業用水路など流れの緩やかな場所を好む。
日本のクサガメの起源
クサガメの日本の集団の起源に関する研究では、化石や遺存体からクサガメと判断できるものが最も古いものでも1800年代までしか遡ることができず、ミトコンドリアDNAの解析によると日本の集団は3系統に分かれ、それぞれが中国、朝鮮、台湾のグループの遺伝子と一致したことから、比較的近代に日本に持ち込まれた外来種である可能性が高いとされる。
生態
雑食性で水生昆虫、甲殻類、貝類、魚類などの動物質から、水草、イネ科等の植物質まで幅広い。噛む力が強く、硬い巻貝やザリガニなども好んで捕食する。
繁殖期は6〜8月頃で、その時期に1〜3回に渡って1〜14個程度の卵を産卵する。孵化は7〜10月頃で、幼体は孵化後地上に出るものと、翌春までそのまま地中に留まるものとがいる。
クサガメはニホンイシガメとの異種間交雑を行い、これらは2世代目も繁殖能力を持つ点で一般的な脊椎動物と異なる。ニホンイシガメは近年生息数を減少させているため、遺伝子撹乱が懸念される。
人との関わり
人に慣れやすく、ペットとして親しまれる。幼体が「ゼニガメ」という呼称で販売されるのは本来ニホンイシガメであったが、近年はニホンイシガメの生息数減少からか、本種がゼニガメとして販売されることもある。
本種の「クサガメ」という名前は、危険を感じる時に腋下甲板や鼠蹊甲板の臭腺から臭いにおいを分泌することに由来するが、飼育下ではこの匂いを出さなくなる。
南方熊楠の飼育していたカメ
飼育下では40年以上飼われる例もあるが、日本の博物学者南方熊楠が飼育していたクサガメは2001年まで生存しており、記録によると1911年以来飼われていたため、90歳以上の長命であった。また同時に飼われていた別の個体は1911年時点で成体だったものもおり、それは100歳以上であったとされる。
本種は中国、北朝鮮、韓国でワシントン条約(CITES)の付属書Ⅲ類に記載されている。
参考文献
- 内山りゅう 前田憲男 沼田研児 関慎太郎 『決定版 日本の両生爬虫類』 平凡社 2007年2月1日 初版第5刷
- 松橋利光 富田京一 『山渓ハンディ図鑑10 増補改定 日本のカメ・トカゲ・ヘビ』 山と渓谷社 2019年10月1日
- 日本爬虫両生類学会 編 『新 日本両生爬虫類図鑑』 サンライズ出版 2022年1月20日 電子版第2版
- 鈴木 大 九州大学アジア保全生態学センター クサガメ日本集団の起源 神戸市立須磨海浜水族館
- クサガメは外来種? 東海大学生物学部生物学科 鈴木大ホームページ
- “Mauremys reevesii” species+