23年秋〜24年春活動報告
本サイトをご覧いただきありがとうございます。管理者のモリサワです。
前回の更新から約半年が経過しました。
以前からご覧いただいている方については、なかなか塩漬け状態の多いウェブサイトだな、と感じられると思いますが、その通りで申し訳ありません(笑)
昨年末より仕事や年内2度目の引越しなどが重なり、かなり多忙な状態でほとんど撮影も執筆もできない状態でした。
バタバタした状態で過ごした状態で年末を過ごしたかと思えば、元旦から能登半島での大きな地震の報道を目の当たりにし、その数日後には本サイトの立ち上げに惜しみなく協力してくれた実の父を亡くし、その他にもこの数ヶ月間落ち着かない状態が続くなど、大きな喪失を色々と見聞き・経験しながら迎えた新年でした。
とは言え、自然界では人間の想いや事情には引きずられず四季が巡り、春の花は開き、鳥はさえずり、新緑が芽吹く様子は何よりも素晴らしいと思います。自分自身もようやく落ち着き始めた春、今後公開する記事やプロジェクトを控えつつ、この半年間で撮り溜めた写真を時系列順にいくつか抜粋でご覧いただければと思います。
下北山のニホンザル
昨年12月は取材等で一時関西に戻りましたが、
その道中で奈良県の南東部の下北山村というところを通ります。
ここは大峰山や大台ヶ原が連なり、大部分が吉野熊野国立公園に指定されており、両生類や甲殻類などの固有種も存在する山深い地域です。
そういう場所ですので、ドライブウェイでは猿に出会うことも少なくありません。ここではかなりの数の群れに出会いました。
野生動物を撮影する時、一つの場所に通うこともありますが、よほど狭い場所に隔離された小動物でないと確実に会えるわけではないので、鳥類や哺乳類になると私の場合多くは運任せです。
特に猿はこの写真のように高い木の上で顔が枝に隠れてしまうことが多いので、今回は全体としてなかなか面白い撮影になったのではと思っています。
※2024年4月現在、奈良県と三重県を結ぶ下北山村間の道路は土砂崩れで封鎖されており、通行不可となっております。
甲山森林公園
兵庫県西宮市、標高302mの低山ながら南部の市街からは最も目立つユニークな外観のこの甲山。
兵庫県南東部としては六甲山と並び自然観察入門のスポットとして出入りしやすいところで、且つ甲山は狭い面積の中で色々な生き物に出会うことができる起伏に富んだ面白い場所です。
甲山の四季を紹介するフォトギャラリーのシリーズについてはまだ完成していないこともあり、12月初旬、秋から冬にかけての景観と生き物を求めて再びやってきました。
甲山では落葉紅葉樹が多く植樹されていますが、見事な紅葉です。
落葉樹の葉のの色彩の違いは暖かい時期にどれだけ日光を吸収できたかに関わっているようですが、同じような場所に植っていても木によって変化が激しいですね。
小ぶりながらも美味しそうに見えるカキ。この年も秋は実りを運んできてくれました。
野鳥達も元気よく飛び回っています。エナガと言えば北海道の亜種シマエナガが大人気ですね。
シマエナガに出会うために北海道に行く人もいるくらいです。
私が以前出会った本サイトの図鑑に掲載中のものは全くの偶然でしたので、とても幸運でした。
キツツキの仲間コゲラ。留鳥として全国に分布しており、少し郊外に出るとよく出会う鳥です。逆にキツツキの中まではこの種以外にはあまり頻繁には出会えないので、そこは悩ましいですね。
近日図鑑掲載予程です。
ヤマガラも留鳥として多くの山地で見られますが、地域分化が著しく、亜種レベルでは既に絶滅したものや、現在危ぶまれているものもいます。
この個体は冬場にしては痩せ型に見えるので、餌を獲れているかどうか少し心配になりますね。
ヒマラヤ山脈等の高所を除き、北半球の日本と同程度の緯度に水平分布するシメ。多くは冬鳥として日本に渡来します。
甲山森林公園内のある場所に行くといつも、夏場は頭を出して動いている、冬場は冬眠してる姿を見ることができます。
因みにこの日は泊まれるところがなく、車の中で一晩を過ごしました(笑)
尼崎の森中央緑地
翌日の取材はこちら。兵庫県尼崎市の海辺の工場跡地で育てられている緑地で、本サイトをご覧いただいた方から教えていただいた撮影地です。
100年かけて、ひとりひとりの参画により「地域が育てる森」をつくり、人々が自然の恵み享受する「地域を育てる森」とすることを基本理念としています。
木漏れ日の差す見事な紅葉。都市部の元工場地でありながら、市民の活動を始め様々な団体の出資にも支えられて育成されており、植物の種類は自然林以上の多さです。
その森をねぐらとする動物達の種類の多さにも驚かされます。
秋冬の寒さにも耐え、森の中を飛び回る小さな昆虫達。
アゲハやモンシロチョウ以外では初めてお目にかかった種類の非常にユニークな姿をしたチョウの幼虫。枯れ葉の下で越冬します。
この場所の取材はもちろんこれだけではありません。準備を整えてより豪華な形でご報告できればと思います。
帰路、道中で見かけた野鳥
一連の取材を終えた帰路、撮影に良い場所はないかと下北山村付近を彷徨っていたところ、なんとクマタカを撮影できました。
高圧電線が映り込んでいるのが惜しいところですが、自覚している限りでは初めての出会いで、自分の撮った写真の中では貴重なものです。
こちらは上北山村の道の駅付近の北山川で撮影したカワガラス。
スズメ目の鳥の中では唯一水中での移動に高度に適応したグループです。バチバチに潜っていますね。
河川周辺でよく見られる野鳥
以下は2月から4月にかけて三重県南部の河川周辺で撮影した野鳥です。
浅い河川でよく見られるダイサギ。実は2亜種がおり、国内での分布も違っており、こちらは亜種チュウダイサギと見られます。ここまで大きな野鳥は限られてくるので目を引きますね。
雨の日の撮影。羽毛が水を弾く様子はなく、濡れているのがわかります。
実はこの4月、トンビをめぐるとんでもない事件に遭遇しました。桜も散り始めた頃、適当なお花見場所を探して車を回していたのですが、通りすがりに美味しそうなクレープ屋さんを発見し、お花のおつまみにしようとしたところ、「トンビに注意」という看板がありました。
まさかな…こんな街中で狙ってきても目立つだろうし問題ないと、その時は意にも介しませんでした。
その後行き先の銚子川という清流で、クレープ片手に川と桜を見ながら休憩していたところ、後ろから「バサッ!!」とものすごい衝撃が襲いかかったかと思えば右手に持っていたクレープは跡形もなく消え失せていました。
目の前の上空には1羽のトンビが悠々と川の向こう岸を目指して飛び去っていきます。
私には一切傷を負わせることなく、音もなく忍び寄り、クレープだけを奪い去ったのです。正にトンビならぬタカを括っていたのでした。
残念ながら証拠不十分で検挙には至りませんでしたが、日頃馬鹿にされがちなトンビもやはり野生のハンターなのだと思い知らされた良い経験になったのでした……。
三重県熊野市撮影。この辺りではハクセキレイよりもセグロセキレイをよく見かけます。
同じく熊野市撮影。私が観察する限りではやはりハクセキレイよりもよく見かけるキセキレイ。胸から下の羽毛が非常に鮮やかです。
青色が鮮やかなイソヒヨドリのオス。ヒヨドリという名前が入ってはいますが、ヒタキ科の鳥です。
紀北町の道の駅で撮影。最近まで気がついていなかったのですが、ツバメが営巣する場所は人通りの多い場所が多く、過疎で使われなくなった施設の軒下には古い巣は残っているものの、その年に営巣が始まったと見られるツバメの巣もツバメの姿もありません。
これはカラスなどの外敵を避けるため、人の多い場所の屋根の軒下を選んでいるからのようです。
熊野市で撮影。4月現在キジは繁殖期に入ったようで、朝一番にオスのしわがれた甲高い声で鳴き始め、山間の至る所でその声を聞き、姿を見るようになりました。
メスは警戒心が高く、あまり姿を見ることができないのですが、繁殖期はつがいで行動し、農耕地の目立つ場所で見ることができます。私も都会に住んでいた頃は遠方に出かける時以外は見ることができなかったのですが、今は毎日のように目撃します。バードウオッチングが好きな方は今が撮影のチャンスですね。
全国で見られる珍しくもない鳥ですが、魚をとらえた瞬間を撮影できたのは少し嬉しくなります。
紀北町のニホンザル
紀北町で出会った猿。十数匹程度の群れが我が物顔で人家周辺の樹木の新芽をむさぼっていました。
これまで集めた哺乳類のサンプルはまだ少なく、昼間でも出会える獣はそれほど多くないので、個人的には嬉しくなります。
猟師さんの話によると、ニホンザルは害獣の中でも最も賢く立ち回るそうで、それゆえ農作物の被害も深刻とのこと。農林水産省のデータではニホンジカが最も被害を出しているのですが、地域レベルではまた実態が違うのかもしれません。
4月の野草と小動物
以下は今月撮影した野草と虫達を紹介します。
春から初夏にかけて開花する美しい紫色の多年草。園芸用に持ち込まれたヨーロッパ原産の帰化植物です。
日本のタンポポとは違い、総苞片という部分が反り返っていることで見分けがつきます。
江戸時代以来根付いた観賞用の帰化植物。
非常に美しい群落を作るマツバウンランは北アメリカ原産の帰化植物で、東北地方以南で広がっています。
ここまで全て帰化植物!人が住むところで日本に元々自生している野草を見つける方が難しいのでしょうか…。
動植物全てに対して、在来種は外観も大きさも非常に控えめでコントラストが弱い傾向にあるのではないか、という印象があるのですが、この派手なムラサキサギゴケは在来種のようです。
こちらも派手ですが、古くから小児の「癇の虫(夜泣きや癇癪)」の生薬に使われたと言われる、東アジアに広く分布する在来種の野草です。
鮮やかな黄色味のこの花はヘビイチゴというもので、花弁が落ちた後に実る果実は食べることもできますが、美味しくはないそう。
シロツメクサに止まるベニシジミ。小さいながらも非常に鮮やか印象の強い色彩です。
イトトンボの仲間は細かい模様や色彩で種が分かれているのですが、これはまだ見分けのつきやすい方だと思います。
先ほどのイトトンボと鉢合わせしたハエ。両方とも「おい、どけよ」と言っているかのようですが、この後両方ともどきます。昆虫の社会も譲り合いが大切なのですね。とても勉強になります。
まるで忍者のようにものすごい速さで水面を移動していたクモ。クモ類の動きには驚かされるばかりです。
実はこの一連の昆虫達を撮影した写真は近所の田んぼの田植えをお手伝いした時のもので、その水際で見つかった卵塊。シュレーゲルアオガエルのものと思われます。
両生類のように変態して大きく姿を変える生き物はその生き様全てを撮影するのが難しいところですが、非常に興味深い取材対象です。しかし、一般的には好まれることがなく、本サイトのトップページを飾ると女性を中心に敬遠されるので、少々辛いところです。
【番外編】シカ猟見学とジビエ体験
以上がこの半年間の主だった撮影内容でしたが、ここで少し時間を遡り、昨年11月中旬に熊野市の猟師さんにシカ猟を見学させていただいた時の様子を少しだけご紹介したいと思います。
基本的に撮影対象の命を奪うことなく、いつも喜び勇んでカメラ片手に山野を歩き回り、川や海を泳ぐ私ですが、やはりたくさんの生き物の犠牲の上に成り立っている人生だと思わざるを得ません。
野生生物を観察することは、正にこの星において自分が何者であるかを決める過程そのものなのだと思います。
以下、ニホンジカの解体を取材した刺激の強い画像が続きますので、苦手な方はこれ以上は読むのをお控えください。
この猟では定まった場所に箱罠を設置し、米糠やミカン等で誘い込み、シカがかかるのを待ちます。
罠猟では設置している間毎日の見回りが義務付けられています。
シカがかかると猟銃で仕留め、即座に血液を抜き取ります。
肉の販売が目的の場合は、加工場で定まったプロセスによって解体されますが、販売目的ではない場合地元の漁師さんが使用する水の綺麗な小川の解体場に移動し、肉に加工します。
腹部を切り開き痛みやすい内臓から除去します。あまり内臓を調理に使うことはないのだそう。
細菌の感染を防ぐ目的で毛皮を除去します。
目に見えて食べる部分の多い腿肉(ももにく)。この他にも背中や肩のロース、肋骨周りなどが非常に美味。
新鮮な内は刺身として食べる場合もありますが、今回取材させていただいた漁師さんはほぼ食べることがないそう。
取れたてはバーベキューが醍醐味ですが、カツ、唐揚げ、シチューなど、どのように調理しても赤身そのものの味が引き立つ非常に美味しい肉です。
以上、ざっくりとした形ですが、半年間の主要な写真の一部をご紹介いたしました。
まだまだ未公開の記事はたくさんありますので、それらへの着手、これから取り掛かるプロジェクトなど進めて行きたいと思います。
末筆ながら、能登半島の地震を始めとする元旦以来の地震や災害で被災された方々に深く哀悼の意を表し、一日でも早い復興をお祈りすると共に、本サイトの制作に惜しみなく協力していただき、亡くなった我が父に謝辞を表したいと思います。