無尾目 anura
現生56科458属7100種以上。幼体から成体に至るまでの間に劇的な変化を遂げるのが本目で、極地を除き世界的に見られる。幼体時には水から離れて生きることはできず、鰓を持ち、四肢がなく尾が発達しているが、成体に近づくと後肢、前肢が順番に発生し、尾は消失する。成体は肺呼吸に変化し、四肢は後肢が著しく発達し、跳躍を行い、雄は発声する。
無尾目は中生代に出現し、新生代になって著しい分化を遂げた。有尾目・無足目よりもはるかに広範囲分布にするが、原始的な群は分布域が限られていることもある。
無尾目に含まれる掲載中の分類群
無尾目に含まれる種
現在7種掲載
体の構造
無尾目の特徴は、短く幅広い胴体と発達した後肢である。後肢は跳躍や移動に適しており、地上での跳躍だけでなく、泳ぎや木登りにも役立っている。骨格構造は高度に進化しており、脊椎は5〜9個の仙前椎と1個の仙椎で構成される。尾は成体になると消失し、尾椎が癒合して尾柱(urostyle)を形成する。
後肢は長く、跳躍運動に適応しているが、これは単に地上での移動に限らず、カエルが水中で泳ぐ際にも有効である。さらに、アオガエルのような樹上性の種は、手足に発達した吸盤を持ち、これを利用して樹木や滑らかな表面に張り付くことができる。
カエルの外観は多種多様で、ゴライアスガエルのように体長30cmを超える巨大な種から、体長わずか7mmほどの小型の種まで存在する。これらの特徴は、種ごとの環境適応と進化の過程を反映している。
分布と生態
カエル類は南極を除く全ての大陸に分布しており、特に熱帯地域に多く見られる。原始的なカエル類は分布が限られている一方で、進化的に高度なグループは広範囲に分布している。カエル類の生態は多様であり、水生、地上生、樹上生など様々な生活形態を持つ。ほとんどの種は湿潤な環境を好むが、中には乾燥地や寒冷地に適応した種も存在する。
カエル類の繁殖は体外受精が一般的であり、湿った環境で卵を産む。卵はゼリー状の物質に包まれ、乾燥に弱いため、水中または湿った環境での産卵が求められる。繁殖行動は多様で、卵を地面から離れた場所に産む種や、親が卵やオタマジャクシを保護する種も見られる。
幼生と変態
カエルの幼生であるオタマジャクシは、水中生活に特化した体の構造を持つ。えら呼吸と皮膚呼吸を行い、長い尾を持つ。四肢はなく、主に草食性である。オタマジャクシは成長すると変態を経て成体になる。この過程でえらや尾は消失し、肺呼吸と陸上生活に適応した体に変わる。後肢が発達し、前肢が生じ、肉食に適した顎や消化器官も発達する。
鳴き声と繁殖行動
カエル類の鳴き声は種ごとに異なり、繁殖行動において重要な役割を果たしている。特に繁殖音(広告音)は、種内の雌を引き寄せ、同種間での交配を促進する。近縁種が同所的に生息する地域では、鳴き声の違いが交配の隔離機能を持つことが多い。逆に、異所的に分布する近縁種では、鳴き声が似ていることがある。
カエル類の鳴き声には他にも、縄張り音や危険を知らせる危難音がある。これらは主に他の雄との競争や捕食者からの攻撃を回避するために使用される。鳴き声は分類学的にも重要な特徴であり、声紋分析が系統解析や分類において重要な手法として用いられている。
参考文献
- 岩槻邦夫・馬渡俊介 監修 『脊椎動物の多様性と系統』 裳華房 2006年9月25日
- "Amphibians", LibreTexts BIOLOGY
- "Amphibians" Lumen Biology II
- F. Harvey Pough "Amphibian Biology and Husbandry", ILAR Journal 2007.03
- 松橋利光 奥山風太郎 『山渓ハンディ図鑑9 増補改定 日本のカエル』 山と渓谷社 2015年6月25日
- 日本爬虫両生類学会 編 『新 日本両生爬虫類図鑑』 サンライズ出版 2022年1月20日 電子版第2版
- 日本産爬虫両生類標準和名リスト(2024年3月11日版)
- "Anura" Catalogue of Life