両生綱 amphibia
分類
- 生物図鑑
- 動物界 animalia
- 脊索動物門 chordata
- 両生綱 amphibia
両生類の多様性と進化の歴史
両生類の出現は約3億6000万年前のデボン紀に遡り、水中生活から陸上生活への適応が進み、最初の陸生脊椎動物として魚形動物群から進化を遂げた。骨格や筋組織は重力に耐える構造となり、特に脊柱が強化され、四肢が発達して歩行が可能になった。
現生の両生類は無尾目(カエル類)、有尾目(サンショウウオ類)、無足目(アシナシイモリ類)の3つに分類される。無尾目は約7100種、有尾目が約730種、無足目は約210種構成すし、日本産は114種が確認される。
多くの両生類は小型化が進み、主に湿潤な環境でそれぞれの種が様々なニッチを分け合い生息しているが、彼らは水中と陸上の双方で生活できる適応力に優れており、その進化的成功はこの適応力に起因している。特に無尾目は多様な環境に適応し、進化の成功を象徴するグループである。
両生綱に含まれる掲載中の分類群
両生綱に含まれる種
現在8種掲載
両生類の生理学的・発生学的特性
呼吸機能
両生類は幼体から成体に至るまでの間に呼吸器官が変化したり、異なる器官を併用するなど独自の生理学的特性を持つ。成体は主に肺と皮膚呼吸を併用しており、幼生は皮膚呼吸と鰓呼吸を行う。皮膚は非常に薄く、酸素と二酸化炭素のガス交換が可能で、粘液腺が皮膚の乾燥を防いでいる。これらのことにより、湿度の高い環境が不可欠である。
変態
大半の両生類は幼生期を水中で過ごし、成長に伴い陸上生活へと移行する。カエル類では、早期の幼生(オタマジャクシ)時は皮膚呼吸、鰓呼吸を行い、変態が進むにつれて鰓を失い、段階的に皮膚呼吸と肺呼吸へと切り替わる。この過程で骨格や内臓が大きく変化し、尾を失うなど、劇的な変化を経て成体に至る。
皮膚と代謝の機能
両生類の皮膚には粘液腺と顆粒腺が存在し、外敵から身を守るための毒素を分泌することがある。皮膚は外界の水分を吸収しやすく、蒸散による水分損失も多いため、湿潤な環境が生存に不可欠である。代謝も環境温度に大きく依存し、外温動物としての性質を持つ。
生息場所と繁殖様式の多様性
両生類は湿地帯や水辺、森林、乾燥地帯など多様な環境に適応している。特にカエル類は、地上、水中、樹上、さらには地下などの環境で生活している。地下生活に適応した種には、スキアシガエル科やヒメアマガエル科があり、乾燥地帯で雨期に活動し、乾期には地中に潜るなどの適応を見せている。
乾燥地帯に生息するカエルは、水分を効率よく保持するために尿酸を排泄し、皮膚の分泌物で乾燥を防いでいる。
両生類の繁殖様式は非常に多様である。水中に卵を産み、幼生が水中で発育するものが多いが、陸上で卵が孵化するものや変態の過程を持たない直接発生も見られる。特に、直接発生を行う種は水辺が少ない環境で適応し、繁殖戦略として発展している。
両生類の脅威と減少
両生類は現在、絶滅の危機に直面しているグループであり、2004年のIUCNの報告では、全種の約40%が絶滅の危機に瀕しているとされている。主な原因は生息地の破壊や気候変動と考えられているが、その他の原因として病原菌が挙げられ、特にバトラコキトリウム・デンドロバティディスは両生類の皮膚に感染し、致命的な心不全を引き起こす。これは熱帯地域の両生類に壊滅的な影響を与えており、個体数の急激な減少が報告されている。
また、 農薬や化学物質による汚染なども両生類の生息環境に深刻な影響を与えている。これらの複合的な要因が両生類の減少を加速させ、彼らの生存を脅かしている。
両生類と人間文化との関わり
両生類は、古代から人間の文化や神話に深く関わってきた存在である。特にサンショウウオには「火の中でも生き延びる」という神話があり、フランス国王フランソワ1世がその象徴を国章に取り入れるほどであった。また、中世ヨーロッパの魔女伝説では、カエルやイモリが魔法や薬に関連づけられて登場することも多い。
両生類の歴史的役割と科学研究への貢献
両生類は時に有益な存在として人間社会で知られてきた。害虫の駆除に貢献するだけでなく、古代から薬としても利用されることがあった。 また、現代の科学研究においても重要な役割を果たしている。特にアホロートル Ambystoma mexicanu は四肢再生の研究で注目され、アフリカツメガエル Xenopus laevis は発生生物学のモデル生物として広く利用されている。これらの両生類は、医療分野における再生医療の発展にも大きな貢献をしている。
参考文献
- 倉本満 『両生類の多様性一生活場所,繁殖,隔離』 J-ATAGE 1997年
- Peng Zhang, Hui Zhou, Yue-Qin Chen, Yi-Fei Liu, Liang-Hu Qu "Mitogenomic Perspectives on the Origin and Phylogeny of Living Amphibians", "Systematic Biology" OXFORD ACADEMIC 2005.06
- 岩槻邦夫・馬渡俊介 監修 『脊椎動物の多様性と系統』 裳華房 2006年9月25日
- David B. Wake, Michelle S. Koo "Amphibians", Current Biology 2018.09.28
- 日本爬虫両生類学会 編 『新 日本両生爬虫類図鑑』 サンライズ出版 2022年1月20日 電子版第2版
- Catalogue of Life
- 日本産爬虫両生類標準和名リスト(2023年6月29日版) 日本爬虫両生類学会