有尾目 caudata
有尾目はサンショウウオやイモリなどの、幼生と成体の両方に尾を持つ両生類の一群で、通常四肢を持ち、前肢と後肢が大きく異なることはない。呼吸の仕組みや生態は多様で、特殊な環境に適応した種類も存在する。
最古の化石記録はジュラ紀(約1億5千万年前)にまで遡り、現性有尾目は9科70属、世界中に約730種以上が確認されており、最も多様なプレソドン科 Plethodontidae は全種の約64%を占める。日本にはオオサンショウウオ科、サンショウウオ科、イモリ科の3科6属59種が確認されている。
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形態的特徴
有尾目は30mm未満のものから1600mmを超える種まで大きさは様々で、細長い胴体から伸びる発達した尾を幼体から成体を通して持つことに特徴づけられ、サイレン科 Sirenidae などの例外を除いて一般的には四肢を持つ。サンショウウオ類の一部には、トカゲ類にも見られる尾の自切といった防御機能が備わっているグループもいる。イモリやサンショウウオ類の繁殖期には、雄が特徴的な色や形態の変化を見せる。
分布と生息環境
有尾目の多くは北半球に生息しており、日本にも多くの種が分布している。水生環境と陸上環境の両方で生活し、湿度が高く安定した低温環境を好むため、地上性の種は湿度の維持が重要であり、隠れ場所や適切な湿度管理が欠かせないが、繁殖期は水中での生活を送る種が多い。
生態
有尾目は動物食で、主にミミズやイトミミズ、水生昆虫や小型の魚類を捕食する。
原始的なサンショウウオは体外受精で、現存する科の大部分は体内受精になるものの、交尾器は存在せず、体内受精するサンショウウオでは、雄の特殊な総排泄腔腺が精包を生成し、雌は精包を拾い上げ、卵は通常総排泄腔を通過する際に受精する。ほとんどのサンショウウオは水中に卵を産み、それが孵化して幼生となる。中には陸生卵を直接発生させるものもあり、卵胎生および真の胎生も知られている。また、一部のサンショウウオは幼生の雄雌いずれかの親、また両方が卵を守るという保護行動を取ることで知られる。サンショウウオは幼生から成体に至るまでの間に変態を行うが、完全な変態から、部分的な変態、そして成体が生涯を通じて幼生の特徴を保持する幼形成熟など多様なパターンがある。
多様な呼吸方式
有尾目は、鰓呼吸、頬咽頭呼吸、肺呼吸、皮膚呼吸など多様な呼吸方法を持つ。プレソドン科など肺を持たない種は皮膚呼吸に依存している。また、水中生活に適応した種では、皮膚のひだを使って呼吸を行うものもいる。
日本の有尾目
日本にはその国土面積に対してサンショウウオ類が広く分布し、地域ごとに分断されて分岐した種が多く確認されており、トウキョウサンショウウオやツシマサンショウウオといった地域限定種や、オオサンショウウオのような大型種が含まれている。また、繁殖地や生息環境の破壊により、いくつかの種では絶滅が懸念されている。
参考文献
- R. Eric Miller, Murray E. Fowler "Fowler's Zoo and Wild Animal Medicine, Volume 8 - Elsevieron Vital Source (English Edition) 1st", Saunders 2014.7.31
- 松橋利光 奥山風太郎 『山渓ハンディ図鑑9 増補改定 日本のカエル』 山と渓谷社 2015年6月25日
- 関慎太郎 松井正文 『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』 緑書房 2021年1月25日
- 日本爬虫両生類学会 編 『新 日本両生爬虫類図鑑』 サンライズ出版 2022年1月20日 電子版第2版
- Heather Heying "Caudata", Animal Diversity Web
- Eric J. Baitchman, Timothy A. Herman "Caudata (Urodela)", Veterian Key
- "Caudata", Catalogue of Life